Reference data

参考資料2   

Psychopathology

Reference data 1

The top page

精神病理学

参考資料1

トップ・ページ

        

   The contents
     目次

      The dialectic 
     弁証法

     The dialectic of the recognition which is the dialectic of the possession
     所有の弁証法である認識の弁証法

     The cerebral judgment function
     脳判断機能 
    
                The cerebral physiology figure of the judgement     
 
                    判断の脳生理図

                     〈 Dialectic of the apperception system and the recognition
                      system of the secondary brain to the coping act
                     〈対処行動に至る二次脳の統覚系と認識系の弁証法〉

                                                                                  

  It returns to the head                                     先頭に戻る

 

 

                             [弁証法]
 
 
  物質はすべて、その単体に於いて質量に機能が付与されていて、【質量+機能 → 総合】
の弁証式で表わされる。生きて意識ある存在も物質である。物質と生命の境界はない。
「在るもの」はすべて存在であるということができる。【質量+機能 → 総合】として
の物質の、その《存在》的側面は、【自体+対自体 → 総合】の弁証式で表わされる。
 物質=存在は、段階的弁証法を以って宇宙に存在する。それ故、上の弁証式の質量、
また自体は、常に[質量+機能]また[自体+対自体]を内包する。物質がその溯源
とする最初の真空の構造素にもこの弁証法が機能している。「在る」ことは、
その質量に機能の働きがあることによって可能となる。
 
  有機物から人間存在に至る個々の存在意識(内包弁証法)と段階的弁証法(外包弁
証法)は以下のように示される。
 
              有機物      植物・微生物        動物            人間
           〜〜〜〜〜     〜〜〜〜〜      〜〜〜〜〜      〜〜〜〜〜
          【質量+機能】+【質量+機能】+【質量+機能】+【質量+機能】
        ───────    
                                                    
          【自体(質量)+     機能   
        ───────────────    
                                    
          【     自体(質量)              機能   
        ───────────────────────  
                      
                           自体(質量)             +   機能       
        ───────────────────────────────    
 
                                                                             
 上は宇宙的存在界の対称性調和の段階的(降階)弁証法であり、食物連鎖で理解さ
れる。〜〜〜は一個の存在の意識、─── は各一つの段階的調和の弁証法である。
Dは段階的にC、B、Aを内包している。 即ち人間は食物連鎖の頂点にあって各段階の
〜〜〜存在にその生命の存続を負っている。
  段階的弁証法は全宇宙的存在質量に於いて観る場合と、一個の存在質量に限って観る
場合も同じ弁証式となる。一個の存在、即ちその身体質量性に就いて観た場合は次の
ようになる。
 人間が食物を食べることは、食べる機能となることであり、食物という質量を咬み
砕き、消化システムで消化することである。歯や胃腸や消化酵素は、こうして消化さ
れ栄養化されたものに過ぎない。一個の人間存在が、無から父母の栄養消化作業に
よって卵子と精子が形成されることに始まったことを覚えるなら、自己の身体はすべて
Dに於ける自体=質量、つまり有機物、植物、動物に他ならないことが理解される。
存在の意識を支える自体=質量、つまり存在の身体質量は降階的段階弁証法に負う。
  上に示した各〜〜〜存在はそれ故、降階的に下のように示されねばならない。
こゝで示された段階的弁証法の範囲では、有機物以後の各存在はそれぞれその全身体質量
を有機物に負い、同時にまた各存在は降階的に全存在の意識の機能に負う。
人間の身体は自己のものではなく、全環界に所属している。
 
              有機物       植物・微生物        動物            人間 
           〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
          【質量+機能】 +  【機能】 +  【機能】 +  【機能】
         〜〜〜〜〜〜   
              有機物
 
          【自体(質量) +   機能   
         〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜                 
                  植物・微生物
 
          【     自体(質量)            機能                  
         〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜                     
                              動物
 
                           自体(質量)              +  機能   
     D   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜     
                                       人間
 
  上に見た一個の存在質量、即ちその身体の中に内包的に析出される段階的弁証法は、
そのまゝそれぞれ全有機物、全植物・微生物、全動物、全人類を対象とする宇宙存在
界が構成する段階的弁証法でもある。この客観的な段階的弁証法を、一個の存在の
対環界の存在運動として観るとき、これを外包弁証法という。 
 段階的弁証法は存在に、存在の意識が環界の諸存在に負うことを教える。
動物の本能は段階的弁証法それ自体の顕れである。但し、動物の身体質量を構成するのは
全宇宙の段階的弁証法のその一部である。宇宙の段階的弁証法が一個の存在を環界から
析出するのは、個々の存在によって調和を維持される必要があるからである。
一個の存在は宇宙の散逸構造素である。このとき、一個の存在を維持する光熱、空気、大地、
水などの無機世界を含む存在界全体は、一個の存在を機能=対自体とする、質量=自体
としてある。
 
 上述の弁証式
 
              有機物       植物・微生物        動物            人間 
           〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
          【質量+機能】 +  【機能】 +  【機能】 +  【機能】
 
                           自体(質量)              +  機能       
        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜     
                                       人間
 
は、この二重の意味を含んでいる。個々の存在のその身体性に焦点を持てば、全段階
的弁証法に負うがその一部を以って自己身体質量とし、一個の存在を以って自らの
調和を意識する環界に焦点を合わせれば、個々の存在は全環界を質量とする機能である。
 
 環界全体の存在性の機能であることを自覚する一個の《存在》は、環境世界と恒常的
に調和して存在していこうとする存在者である。この《存在》の在り方、即ち存在(生存)
の弁証法を【調和の弁証法】と言う。その弁証式はすべての存在意識の弁証法と
同じであるが、しかし以下のように、機能、あるいは対自体が《存在》自身を示すことになる。
 
     A) 調和の弁証法          【質量+機能→総合】
                                【自体+対自体→総合】
 
          二存在間の対称性調和弁証法は次のような弁証式となる。
 
            A + B →  integration   ─┐                            
                                            INTERACTION (integration)   
            B + A →  integration   ─┘                            
 
  これと反対に、人類のように、生きることが環境破壊を伴い、他存在との調和共存
を考慮しない《存在》の在り方を、【所有の弁証法】と言う。
  この《存在》は、【質量+機能 → 総合】の【機能】を【質量】をもつものゝように
振る舞わせ、以下のような弁証式で表わされる。【質量+質量 → 総合】の後者の質量と、
対自がこの《存在》自身である。
 
     B)所有の弁証法          【質量+質量→総合】
                 【即自+対自→総合】
 
       in itself + for itself  synthesis (Aufheben)】は下のようにも示す。
                                                     
                           【正+反→合】
                           【定立+反定立→総合】
 
          二存在間の対称性所有弁証法は次のような弁証式となる。
 
            A + B →  synthesis   ─┐                            
                                          INTERACTION (synthesis)     
          B + A →  synthesis   ─┘                            
 
  もし段階的弁証法が所有の弁証法のみで機能しているなら、各存在[質量+機能]
は以下のような>記号(A>B=BがAを所有する)で示される。
 
              有機物      植物・微生物        動物            人間
           〜〜〜〜〜     〜〜〜〜〜      〜〜〜〜〜      〜〜〜〜〜
          【質量+機能】>【質量+機能】>【質量+機能】>【質量+機能】
 
  各存在の[質量+機能]は存在意識である。上の関係式は一個の存在が対外界の
各存在に対する、仮定された段階的所有の弁証法である。これを宇宙の意志が所有意志
を持つとして以下のように表わすことはできない。調和の弁証法の下では存在に内包し、
また外包する各レベルの存在性はその独自性に於いて機能し続ける。調和の散逸構造は
個即全であり、個が全体の各個の独自性を配慮することに於いて機能する。
この散逸構造はフラクタル構造の各レベルに機能するからこそ、フラクタル構造という
段階的弁証法が可能となる。
  そもそも宇宙的存在界が段階的に微分されて構造化し、存在意識を持つということは、
不調和真空が、その内在させている不調和を調和の意義へと解消せんが為であった。
その元を質せば、最初の調和真空の調和への意志が働いていることに他ならない。
物質の歴史に生ずる段階的不調和存在(モノ存在)は、不調和真空由来の不調和性で
あり、不可避的な姿として認めなければならないにしても、物質が求める最終的な姿
は最初の調和真空が持っていた調和の充足である。それ故、不調和真空からウイルス
に至る段階的な各不調和存在は、段階的な各調和存在に至る為の過渡的存在に過ぎな
い。
  もし段階的所有の弁証法で宇宙が構成されたとするなら、一個の存在現象としても、
また《存在》が機能となって行なう宇宙質量を自体とする環界の弁証法としても立ち
行くことができなくなるだろう。
 
              有機物       植物・微生物        動物            人間 
           〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
          【質量+機能】 >  【機能】 >  【機能】 >  【機能】
 
 例えば、一個の存在のその身体性を担うものとして上のように示すことはできない。
もしこのように下位レベルの存在の意識の機能を所有することになれば、下位レベル
の存在はその存在性をたちどころに喪ってしまうだろう。人間に於ける脳萎縮性痴呆
症は、成人となることを待たずして、四才頃の第一反抗期で発症してしまうことになる。
 
  本文で、物質の歴史に於ける段階的な所有存在は、存在複合として示された。また
その独立性としてはモノ存在として示された。つまり、各調和存在のように個即全の
配慮機能を持つようには独立した存在足り得ない。ウイルスが人体に侵入するのは人体
の個々の細胞の中に複合すべき同類を見て取るからである。それは人間(自己主体性)
のように所有する為に所有するのではない。それ故、その所有理念は”複合”理念
と呼ぶことが正しい。自然状態に放って置いても、ウイルスが地上を占拠してしまう
ことはあり得ない。宇宙の意志は調和であり、細胞はその調和力でウイルスとの共生
を図り、ときには殺傷撃退する。しかし、宇宙は現在の物質界の姿に留まることを
望んでいるのではない。宇宙はわれわれ物質世界を超えた一個の調和存在として行動
する。個々の《存在》は宇宙の多角的意識のひとつに過ぎず、宇宙は更に相転移して、
新たな調和意識状態を求めていく。
 
  人間の場合は、紛れもなく所有理念を有し、その身体の中で現象する存在の降階的
所有は、各レベルの存在の調和に働く存在意識を生かさず殺さずの状態で為される。
その身体に統合される各レベル存在に対する所有は、以下のように調和の弁証法に
ある存在と同じ弁証法による。
 
              有機物       植物・微生物        動物            人間 
           〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
          【質量+機能】 +  【機能】 +  【機能】 +  【機能】
 
  但し、人間が直接その所有力を動物の機能に及ぼせるのは、自らの身体性を損なう
ことのない言語記号の体系のみであり、その言語記号を産出している我観の能力をも
掌握してしまうことはできない。上の弁証式の人間の下に示された[機能]は
[概念質量+言語記号体系]の主観を生成する弁証法が内包される。これは、参考資料1
の〈主体の本能所有=その主体意志組み込み経路〉の概念図の説明文の終わりに、
[言語記号+主観]として示された弁証式に同じである。この式は[認識主観+自由主観]
に同じであり、更に認識主観は認識我観にしても同じであると言われた。認識の能力
は我観の能力であり、認識主観は後に見るように我観をジャックしているだけであり、
その本質は左脳の我観の概念能力である。こゝでは言語記号は概念として質量性を
持ち、言語記号体系は概念の体系を体系として統御する機能である自由主観(自己)の
ことを言う。概念質量としての言語記号は実質的に我観に負っており、純粋な主体部分は、
言語記号を体系として維持する自由主観のみであると言える。体系は何等の質量を
有することのない機能である。しかもこゝで問題にされている質量自体が概念という意味の
質量に過ぎない。[認識主観+自由主観]の弁証法的総合は[主体性]であり、
この主体性が上の弁証式の人間に示されていた[機能]のことである。
主体性は本能身体に組み込まれてはじめて[主体存在]となる。
 主観的認識は言語記号概念に拠り、この認識が身体質量を持つ存在運動に転化する
為には、右脳の認識我観で翻訳されねばならない。我観は、この主体主導概念を図式概念
に翻訳して身体を誘導する他に、本能身体独自の存在運動を誘導するという重要
な役割を持っており、それ故、後にも示すように大脳の右半球を理性、悟性、概念力
の各レベルの図式概念を扱う領野として、また頭頂の運動認知野と体性認知野、後頭
の視覚認知野などの認知能力の為に左右の大脳領野を確保している。
  自由主観は言語記号の体系の宰領者として、この体系の等価物としての自由(所有)
の概念、即ち、所有、支配、権力、翻弄の主体理念を産出する。これのみが主体の直接
所有物である。主体は右脳我観と知感覚を間接的に所有し、この二つの能力を介し
て本能統覚を遠隔操作する。身体を構成する細胞、また細胞を構成する有機分子、
その構成体である原子等を直接所有できないことは言うまでもない。
  宇宙が繰り広げる段階的弁証法は、過渡的に不調和存在を残滓として残すが、調和
の弁証法によってのみ可能となり、また一個の存在の身体質量を構成する段階的弁証法
も調和の弁証法である。ただ、一個の存在が対環界に存在運動を行なう場合に限り、
所有の弁証法が実際に行使される。その際の存在の意識は所有理念、
あるいは”複合”理念の下に、その身体質量を構成する降階的各レベルの調和の
存在意識をコントロールする。それ故、所有理念を持つ存在の意識も、所有の弁証法
ではなく、調和の弁証法をその身に纏う。


 The contents                        To top of this item項の先頭に戻る

 

 

                    [所有の弁証法である認識の弁証法]

  

  弁証法はあるものとあるものとの対話の総合であり、この総合は判断と同じである。
  自然存在は統覚と認識の二個の弁証法機構を持つ。個体存在の意識は
 
              身体+脳神経機能 → 総合  
 
で表示されるが、以下の二個の弁証法の価値優位の統合である。      
 
              身体(全器質)+脳神経機能 → 価値(統覚)                                                                                            
              脳身体(脳器質)+大脳小脳機能 → 概念(認識)                            
 
  これを判断の種類で示せば以下のようになる。
 
    T)統覚判断=意義の弁証法機構
 
          全身体+脳本能機能    価値能力(良・快の知感覚力、
                      及び調和・親近の統覚力)
 
    U)認識判断=意味の弁証法機構
 
          脳身体+脳認識機能    認識能力(理性・悟性・概念力)
 
 
 Uの認識判断の能力が所有の弁証法で機能していることを下に示す。
  認識は
 
            事柄 A  + 事柄 B    揚棄(帰納・演繹)
 
の弁証式で示され、帰納・演繹の繰り返し、即ち弁証法的発展過程が認識思考である。
  認識とはあるものAの意味を所有することである。いま対象界にある皿=事柄Aが
( のような図式を、認識する脳内に産出させたとする。認識力は自己が保有する@
[やA|の図式を脳内に再生して照合し、事柄Aが皿の概念〈に定まる。こゝで再生
された図式は事柄Bであり、その@とAは事柄Aに対して次のように直列処理される。
これは帰納法であり、
    事柄A+事柄B→事柄A・事柄B@の総合+事柄BA→皿の概念〈
の発展的弁証式を以下のように為す。
          ( +    → 〔 + |    
のようにして概念が確定する。
 また、事柄Bに@壷∪とA鉢∨、及び皿〈を再生して、
    ( +    → ∪より〈である + ∨ → ∨より〈である。よって〈である。
の演繹法による発展的弁証法を行なう。
 
  以上は、対象それ自体の意味を構想する概念力の弁証法である。認識力は、
この構想判断を行なう概念力の他に悟性と理性を持つ。悟性は規定的判断力と言われ、
対象の存在状態を判断する。理性は目的的判断力と言われ、対象の存在目的を判断する。
規定的判断力は、「対象がこちらに向かって来る」というような対象の存在運動の状態を
判断し、目的的判断力は、「対象は私と親しくしたいと願っている」というような対象の
存在運動の意志目的を判断する。この悟性と理性の判断が使用するのも同じ
発展的弁証法である。
     

 The contents                         To top of this item項の先頭に戻る

 

Psychopathology

Reference data 1

The top page

精神病理学

参考資料1

トップ・ページ

 

 

                           [脳判断機能]


                        〈判断の脳生理図〉

    ∴ 図は外部情報の対処過程として示す。                                  
    ∴ 図は主体存在と個体存在に共通である。                                 
    ∴ 説明は主として主体存在に即して為されている。                         
                                                                            
                                                       誘導図式→           
                                          ┌───────────────┐
             二次脳新皮質(大脳新皮質)                                
          ┌───────────────┴────────────┐        
                              ┌────────────────┐│          
                              │ 体性・運動・補足運動・運動前野 ││        
                              └────────────────┘│          
                                                   ↓ ↑                  
                                           大脳新皮質頭頂連合野       
          │ 大脳新皮質側頭連合野← ───→   (体性運動図式)         
                ↑(概念判断)↑              ↑ (誘導図式)         
                                              ↑↑              
┌───→│      │    大脳新皮質認知野 ──┘    ││              
                        ┌───────────┘│              
                                                             
                                                              
        │ 大脳新皮質前頭連合野 ←───→ 大脳新皮質前頭前野← ─┼─┐│
           (悟性判断)                    (理性判断)         ││
        └────────┬─────────┬─────────┘  ││
                          │↑                │↑                  統││
                          ││                ││統覚誘導の指示    覚││
                         ↓│                ↓│                  判││
└────────┐┌───海馬 ← ───→ 扁桃体・中隔核など       断││
  知感覚判断の投射││  (了解と解釈)┌─→(統覚誘導の発動)     の││
                  ││   (一時記憶) │        ↑│                  投││
                  ││          ┌──┴─┐   ││                  射││
                  ││┌────┤嗅覚情報│    ││統覚の誘導          ││
                  │││        └────┘    ││                    ││
┌────┐      │↓↓                      │↓                    ││
│視覚情報├──→ 視床 ─────────→ 視床下部(二次脳統覚)   ─┘│
└────┘     (知感覚判断と発動) ←──(意志統覚判断と発動=感情)  
                  │││↑↑↑│           (運動統覚判断と発動=官能)  
                  ││││││└────┐            │↑                
          統覚図式││││││統覚図式              ││                
      ┌─────┘││││└────┐│            ││                
                  │││└─┐      ││            ││対称性弁証法    
          ┌───┘↓└─┐│      ││            ││                
  大脳新皮質│┌─大脳新皮質││      │↓            ││                
  補足運動野││  体性認知野││     大脳基底核 ←──┼┼────────┘
  運動前野  ││      ┌──┼┤→(二次統覚図式)┌─┘│                  
          ↓↓          │└──┐ ↑┃       │┌─┘                  
  大脳新皮質運動野─┘          │ ┃↓       ↓│        ┌─────┐
                    ┌──┼───→脳幹(一次脳統覚)←──┤触覚、味覚│
                                 ↑┃ │                │聴覚情報      
              └───┘            |↓ └──────┐  └─────┘    
      ┌──┐              └────小脳(一次脳皮質)                      
      │行為│←─────────────────────┘                    
      └──┘                                                              
                                                                            
                                          
                                                                            
      ※ 現在の脳生理学では、大脳辺縁系が感情と官能の発動や価値判断の座と目
         されている。しかし、辺縁系を含む大脳皮質が如何なる意味に於いても、
     統覚の機能を持たないことは、次の神経伝達物質の働きを見ても明きらか
である。
         大脳基底核のひとつである側坐核は、新皮質前頭葉と側頭葉、扁桃核、海
         馬、覚醒神経であるA10とA6神経、それに視床から、TRH(甲状腺刺
激ホルモン放出ホルモン)を受け取って、脳幹、視床下部、視床、それに同
         じ基底核の他の核群にカテコールアミンを分泌する。カテコールアミンは
         快楽作用を持つドーパミン、怒りの作用を行なうノルアドレナリン、恐怖
         や不安を引き起こす作用を持つアドレナリンの総称である。カテコールア
         ミンは睡眠などの鎮静系に対する覚醒系である。鎮静系に対して覚醒系は、
         エネルギー消費を大きくする働きを行なう。この系では大脳皮質が、その
         産出した対処方法と体性運動の概念を、基底核を中心として統覚全体に送
         出する。
         この系ではTRHは前頭前野の理性概念野から分泌され、直接、また皮質
         とおそらく視床を経由して、側坐核に集積する。視床を経由するのは、皮
         質が処理している概念を常に新しい外部情報を取り入れている視床と同期
         させなければならないからである。TRHは脳幹の延髄、視床下部、基底
         核が主に創出している。皮質の理性概念野はTRHレセプターで、これら
         で産出されたTRHを受け取る。辺縁系はTRH産出能とTRHレセプト
         能を等分に持っていて、理性が放出するTRHを増幅して側坐核に送る。
         側坐核はTRH信号をカテコールアミンに変換して、上述の各部に投射す
         る。このことからカテコールアミンに浸される側坐核を含む大脳基底核、
         それに脳幹、視床下部、視床群と、TRHに浸潤している辺縁系を含む大
         脳皮質群の二群を析出することができる。明瞭に二群を分かつこの分泌系
         を見る限り、側坐核以下のカテコールアミン浸潤群に統覚の機能があり、
         この皮質下群に接する辺縁系が、理性が統率する概念の終末処理に当たる
         機能を行なっていることが理解できる。つまり、海馬や扁桃や中隔が統覚
         の機能を持たず、感情や官能、知覚や感覚を醸成するのでないことが理解
         できる。
        ── は外部情報を受け取った統覚が、その判断を送出している経路を示 
         す。
      ※ 触覚、味覚、聴覚からの外部情報は、大脳(二次脳)に直接投射する経路
        もある。
      ※ 大脳への外部情報は、嗅覚を除いてすべて知感覚判断を司る視床を最初に
     経由する。
      ※ 視床下部と大脳基底核は二次統覚(上位統覚)である。これに知感覚判断
     とその発動を司る視床を含めた全体が、広義の統覚である。統覚は身体定
         位−運動(通常、身体運動と呼ぶ)を発動し、全身体質量を担う。体性運
         動はこの統覚である身体を誘導する機能である。下に示す[対処行動に至
     る二次脳の統覚系と認識系の弁証法]の概念図、及びその説明を参照。   
     ※ 大脳基底核は尾状核、被核、淡蒼球、黒質などの構造を持っている。
     大脳基底核は統覚の身体定位図式、及び身体運動図式を発動する。統覚が
       発するこの図式は、大脳皮質の思考(観念図式)や体性運動図式にとって
     は不随意である。
          ── で示された統覚図式は、大脳基底核から視床を経由して大脳皮質運 
         動前野と補足運動野に入る。
      ※ 体性運動図式は、自己身体、及び対象の身体の体性運動を認識する。自己
         の身体行動、即ち自己了解に於いて、また対象解釈に於いて、体性運動図
式は先行発動している統覚図式を誘導する誘導図式である。
   ※ 外部情報を受け取った視床の知感覚判断は新皮質全体に入力される。前頭
         葉眼野ではその情報に基づいて対処対象を補足する。眼野から各認知野に
         情報が送られて対象が識別され、それを各連合野で認識する。次いで認識
         された対象に対して視床下部が意志統覚判断を為し、この判断が前頭前野
         に送られ、理念となる。理念に基づいて対処方法が思考され、身体行動の
         必要性が認められると、頭頂連合野で体性運動図式が概念化され、体性認
         知野と運動野との協応によって体性運動へと行為出力される。
         体性運動図式は、扁桃体が統覚と連絡を取りながら、基底核が発動する統
         覚図式に歩調を合わせて発動される。視床下部は扁桃体に統覚判断を送り
         出し、扁桃体から誘導図式の発動の準備ができた連絡を受けると、大脳基
         底核に統覚図式を発動させる。統覚図式は視床を経由して大脳皮質運動前
         野に送られ、最終的に行動を先導指令する。
      ※ 扁桃体と視床下部のフィードバック機構とは別に、大脳基底核は新皮質各 
       連合野と運動野を含む各認知野と、視床を結ぶ閉回路を持つ。この回路で 
         基底核は皮質から、対処方法(観念図式)から体性運動図式(誘導図式) 
         に至る概念の投射を受けている。
      ※ 視床は外部情報の最新の捕捉を行なっているので、一次脳と二次脳の間に
         交わされる情報、及び二次脳内部の情報もすべて視床を中継する必要があ
         る。従って、基底核が発動する身体定位−運動図式(統覚図式)も視床を
         経由して運動前野に送られる。
     基底核の統覚図式は一次脳脳幹の中脳上丘と橋にも同時に送られる。この
        送達は一次統覚図式との協応が、二次脳の誘導図式が小脳が発動する誘導
         図式と連携するに先だって為される為である。
      ※ 眼野は視覚と聴覚による対象捕捉を行なう。従って、眼野からの新皮質全
         体への出力があり、そのフィードバックがある。
      ※ 小脳から出る ── と、脳幹、及び小脳に入る ── は、身体行動(体性 
      認知を含む)に関するループ経路である。認識に関してもこのループ経路 
         がある。一次統覚と二次統覚の間にもっとも明瞭に見られるのをはじめ、
         一次脳と二次脳を結合する経路はすべて対称性弁証法構造を展開する。但
         し、統覚に関しては対称性調和の、認識と体性運動に関しては対称性所有
         の弁証法である。
         小脳も大脳と同じく、認知と、思考と体性運動に関する判断の能力を持つ。
      ※ 脳機能の全体を質量に還元するならば、個々の機能をそれぞれ一個の存在
      として見ることができる。このとき、脳機能の各部は互いに対等な散逸構
     造を形成している。統覚機構と認識機構の間で展開される回路(フィード
         バック機構)も、対称性弁証法を行なう散逸構造を形成する。
         統覚系も認識系も互いに対等なこの散逸構造の中で、しかし、認識系の弁
         証法は統覚系の弁証法の機能となって働く。即ち、このとき、認識系はそ
         の質量を統覚系に吸収され、自らは対自体=機能の働きに専念する。脳神
         経機能のみならず、生体に於いては種々の弁証法機構が並列関連し、また
     層構造を為している。
      ※ 海馬、扁桃体、中隔核などは大脳辺縁系と言われ、大脳の古皮質と旧皮質
     からなる。
      ※ 海馬が行なう了解と解釈は、認識された概念に知感覚、及び情官を結合す
         ることによる。
      ※ 中脳から延髄までの脳幹と、脊髄は一次統覚機能である。こゝでは知感覚
         判断と発動、情官の判断と発動、及び知感覚と情官の図式が形成される。
           知感覚図式は統覚図式と同じような性質を持つと思われる。身体運動図
         式は体性運動図式に次のように関係する。知感覚図式は体性図式と、統覚
         図式は運動図式と関係して、誘導される。
      ※ 統覚の身体定位図式、及び身体運動図式は、新皮質頭頂連合野で生成する
      体性運動図式とは区別される。体性運動図式は辺縁系を経由して視床に入
        って、官能の伸張、縮退の身体運動図式を誘導する。体性運動図式は体性
         運動の概念である。この体性運動の概念は個々の筋運動に関する運動野に
         も同時に働いて、これを誘導する。
      ※ 左半球の言語記号は前言語記号を通して感情と官能に結合する。しかし、
         体性運動は右半球の現実時空に展開する図式概念を必ず必要とする。前言
         語記号は略図に過ぎず、前言語記号で構成された体性運動図式だけでは身
         体を運動させることはできない。頭頂連合野の体性運動図式は左半球で略
         図を描き、右半球で現実時空の図式に変換されてはじめて体性運動が表出
         される。従って、海馬が概念を了解と解釈に持ち込む場合も、扁桃体が視
         床下部に誘導の連絡を行なう場合も、左脳の処理だけでは真の存在運動に
         至り得ない。
         小児自閉症は小児の精神病であり、第一反抗期年令以前に罹患する。第一
         反抗期は主観が身体を所有する為に必要な儀式である。精神病は分裂病や
         躁鬱病のことであり、この精神疾患は本能の調和価値と主体の反調和価値
         の間の葛藤の結果、本能価値を捨て去ることによって発病する。本能価値
         は身体が発動する感情と官能のことであり、身体は価値そのもの、また情
     官それ自体である。小児では第一反抗期の身体所有の儀式を通過する前に
         罹患することから、本能価値の捨象はそのまゝ身体の捨象となる。成人精
         神病では主体性は崩壊するが、身体の所有は底流に残存する。しかし、小
         児では身体を調和価値とともに放棄すると、身体と主観が完全に分断され
         る。自閉症の子供はそれ故、身体を動かす為に、左脳の主観で体性運動図
         式を組み立てゝから、右脳の体性運動図式野にそれを写し取る為に最初の
         苦労を味わう。
         右半球は我観の座であり、我観は本能身体の認識機能の域を自ら逸脱する
         ことはない。我観を機動させることに成功すれば、後は自動的に我観が身
         体を駆動してくれる。自動的であるのは、右半球に生成する概念は、必ず
         海馬で了解と解釈が付されるからである。つまり、感情と官能、従って身
         体を得る。しかし、身体の所有はこの概念野の手続きによるだけではなく、
         知感覚の主体的な刺激を主体理念の発動と同時に為すことによって可能と
         なる。自閉症児は刻々の身体行動に就いてこの煩雑な手続きを行なわねば
     ならない。常主体性もまた、この同じ手続きを刻々に行なうが、身体は既
         に自己のものとなっており、左右半球は一続きとなってこの二領域は迅速
         に意志疎通できる。               自閉症の症型
      ※ 一次脳の統覚である脳幹の運動反射は、一次統覚がその統覚図式に基づい
        て発動する。二次統覚の図式の発動もまた反射であるが、この発動は大脳
       の対象解釈を経て、更に対処行動が確定するまで保留維持される。対処行
        動が決定し、理性が行動理念を指示するに及んで、最初の統覚発動は軌道
         修正されて、再度発動される。統覚図式が発動されるとともに、体性運動
         図式が頭頂運動連合野で作成され、これを扁桃体が誘導図式として統覚図
        式に合流せしめる。統覚図式と誘導図式は下に示すように弁証法機構を形
         成する。
      ※ 脳幹は二次脳の扁桃体とも直接結合している。
      ※ 体性野、視覚野などの感覚野は対象を識別認知するのであり、良、不良や
        快、不快を知感覚するのではない。それ故、これら感覚野を認知野と呼ぶ。
      ※ 不安神経症、あるいはパニック症候群と言われる神経症の一群がある。主
     観的な恐怖や不安に因り、種々の身体症状を発症するが、パニックが起こ
         っている状態のときには、辺縁系の活動が昂まってことが知られている
         (注2)。このとき、患者の左半球の辺縁系の活動が右半球に較べて相対
         的に低下する。常精神対照群ではこの辺縁系の活動は左右対称であること
         が知られている。
         神経症は、左脳で形成する主体理念を自律させることができない精神疾病
         である。パニックは主体理念を特に誇示、または維持しなければならない
         ときに起こる。このとき、左半球では前頭前野での理性概念の形成が失敗
         に終わり、主観は扁桃体に誘導図式の作成を指示することができない。こ
         れが左半球の辺縁系の活動力の低下の理由である。
         主体が本能身体を誘導できない状態は、身体に着せられていた衣服が剥ぎ
         取られた状態である。身体が剥き出しに存在することになる。人の身体は
         調和意志を持つが、主体に所有されることで常に不安、絶望、混沌、恐怖
      の根本情態性にある。剥き出された身体は、視床下部から右半球の我観の
         本能理性概念野へ根本情態性の意志判断を送り出す。本能理性は根本情態
         性の理念を同じ右半球の扁桃体に送り、誘導図式の作成を指示する。これ
         が右半球の辺縁系の活動の昂まりとして観察される。
      ※ 私は精神病理学を研究主体としている。現在、研究成果の著述に携わって
         いるが、完成の暁には精神病理学を飛躍的に進歩させる内容を持っている。
         その中でのひとつのトピックスは脳萎縮性痴呆症を自己主体性の精神疾病
         と特定できたことである。
         脳萎縮性痴呆症は、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、老年痴呆症、
         アルツハイマー症の四症候群と、進行性核上性麻痺、ピック病、プレスビ
         オフレニー、アルツハイマー症左半球皮質障害型の四症候群に分類される。
         各四症候群は対になって、自己主体性の四つのタイプから生ずる。但し、
         この分類は未だ作業仮説の段階である。
         各四症候群の前者は主体の抑圧に因って生ずる本能の根本情態性発動を、
         更に抑止することに因って生ずる。後者は主観が主体理念を強力に推し進
         めることによって、根本情態性が過剰に発動されることに因って生ずる。
         基底核の発動する統覚図式は、いま言ったように主体が身体を宰領する限
         り、その基本図式に根本情態性を含んでいる。前者の根本情態性抑止型で
         は、主体の所有理念による誘導図式を強化して、基底核が発動する統覚図
         式を抑圧無視することによって、基底核の能力を無為にしてそのニューロ
         ンを破壊に導く。後者では主観が前頭前部で主体の所有理念を強化するこ
         とによって、視床下部にストレスを与え、根本情態性を過剰に発動させる
         ことが自己免疫反応を活性化して、左脳の前頭葉を中心にニューロン破壊
         を起こす。
         本能意志は、主体が本能の調和価値に同調的である場合に限り、その所有
         力に協力するが、強力な自己主体性の所有、支配、権力、翻弄の意志に対
         しては、非暴力的反抗で応ずる。その反抗は持続的意志を以って根本情態
         性で反応することである。根本情態性に於ける持続的意志は抑圧者に対す
         る非協力、非妥協を意志表示する。囚われの鳥が飲食を拒否し、飢えと脱 
         水に因る自然自殺を選択するように、また実存主義文学の祖でもあるカフ 
         カが、結核菌に食されていく自らの身体に何の手だても施さない方向を最
         終的に選択したように、根本情態性に於ける持続的意志は調和を微塵も解
         さない抑圧者に対して、非協力、非妥協の自然自殺に向かう。非協力、非
         妥協の自然自殺は自ら自身に手を下す必然自殺から区別される。 
          根本情態性抑止型は基底核が自らその働きを無為にすることによって自
         然自殺に至る。主観強化型は根本情態性の過剰発動を持続的に行ない続け
         ることによって非協力、非妥協の自然自殺に至る。後者は主観が宰領する
         皮質破壊に至るが、皮質を含めその身体はすべて本能存在のものであり、
         皮質破壊は主観に対する攻撃ではなく、自死を示している。
           主観強化型では、左半球前頭葉に病巣がはじまり、側頭葉、及び辺縁系
         に掛けてニューロンが萎縮破壊されていく。その後右脳にも病巣が拡がる。
         根本情態性抑止型では、大脳基底核にはじまり視床下部、脳幹にニューロ
         ンの変性が拡がっていく。両者は最終的に全脳にその病巣を拡げていくが、
         全体が壊滅するまでに、機能低下に陥って、生命の終焉を見る。
          根本情態性抑止型であるパーキンソン病では大脳皮質の尾状核で、快楽
         の神経伝達物質であるドーパミンと怒りの神経伝達物質であるノルアドレ
         ナリンが特異的に低下している。尾状核は皮質連合野から対処方法と体性
         運動の概念投射を受け、尾状核とともに線条体を構成する被殻は、運動野
         と体性認知野から投射を受けている。このノルアドレナリンの特異的低下
         は、尾状核が自らその機能を放棄しつゝあることを示唆している。観念図
         式の投射を拒否する為である。これとは反対に、視床でノルアドレナリン
         とドーパミンが亢進しているのは、主体の本能に対するもうひとつの意志
         組み込み経路である知感覚誘導路から、良、快刺激が行なわれていること
         による。知感覚刺激は本能にとっては不随意であり、良、快刺激を不良、
         不快に変ずることはできない。
           パーキンソン病ではドーパミンは全体的に低下している。これはもちろ
         ん組織と機能が萎縮低下していることを示している。
 
                脳萎縮性痴呆症(認知症)の症型
 
 
    注2:Discovering the Brain for the Institute of Medicine   Sandra 
           Ackerman (日本語版 脳の新世紀 中川八郎・永井克也訳 化学同人)
        に記載の    ワシントン大学医学部 マーカス・レイクルによる。

 The contents                        To top of this item項の先頭に戻る

 

 

              〈対処行動に至る二次脳の統覚系と認識系の弁証法〉
                                                

     
 ┌─────────────────────────┐  ┌───────┐
                    ┌─────┐    ┌────┐    │┌─────┐│
                    │知感覚発動│    │統覚発動│    ││ 存在運動 ││
                    └─────┘    └────┘    │└─────┘│
      対象を質量とする知感覚の      連続・不連続                    
      良・不良、快・不快の判断      伸張・縮退の判断│                
    ─────────────    ─────────│                
      自体             対自体           SOUGOU     ├─┤              
    ────          ─────        ────                    
    外部対象   +    知感覚判断  →   統覚判断      │身体定位−運動│
  │(受容対象)    (対象受容判断)   (対象受容)    │ (統覚図式) │
                                       ↓                    
    外部対象        認識判断        対処方法         体性運動   
  │(所有対象)    (対象所有判断)    (対象所有)    │ (誘導図式) │
  └─────────────────────────┘  └───────┘
    ※ ↓は統覚機構からの認識機構への指示である。
    ※ ↑は認識機構による統覚機構に対する誘導である。
    ※ 認識判断は[知感覚判断→統覚判断]の間にあって、統覚判断を誘導する。
       対処方法(観念図式)は[統覚判断]を[存在運動]へと誘導する。体性運 
       動(誘導図式)は[身体定位−運動]の間にあって、身体運動(官能)を誘 
       動する。それぞれ前者の認識機構は、後者を質量(自体)とする機能(対自 
       体)である。
    ※ 右の枠内は統覚判断、及び統覚発動の下に為される現実の行動である。
       現実行動は、対処対象と対処者の間に展開される弁証法的総合である。
    ※ 認識力の認識判断では、まず対象を認知する。認知対象は認識の所有の弁証 
       法の質量=即自となる。演繹と帰納の弁証法が順次為されて、発展的弁証法 
       を構成する。
    ※ 知感覚判断されたものは知感覚発動し、認識判断されたものは概念となる。
    ※ 統覚での価値判断に於いては、その判断が如何なるものであろうとも、対象
は受容される。対象に対して態度を決定することが受容することである。こ
れに対して認識判断では、対象は常に所有される。
    ※ 統覚判断が弁証法的 SOUGOU で示されるとき、この統覚は広義の統覚である。
       広義の統覚は判断の対象から受けた知感覚判断を含んでいる。参考資料3の 
       〈存在度=生きる意欲の判断〉の座標が、広義の統覚の価値判断を示す。
       ”怒り”は(+・−)域を判断するが、統覚自体は自己の自由、即ち調和域
       にある。(+・−)の(―)要素は知感覚であり、もし知感覚判断が(+)
       になるならば、たちまち存在運動は(+・+)域に昇華できる。縦軸の統覚
       の自由度は、”怒り”の(+・−)域、調和の(+・+)域を通じてコンス
       タントに最大を保っているからである。統覚の調和・不調和度が自由度と言
       われるのは、知感覚判断が不随意であるのに対して随意性を確保しているか
       らである。この随意的自由は主体的自由を指すのではなく、知感覚判断に対
       する自由を示す。自己の空腹の不良、不快判断を、わが子の為に堪え忍ぶこ
       とができるのは、この統覚の自由性故である。このとき愛の力が存在を(+
       ・+)域の判断へと引き上げる。価値判断に於ける縦軸のこの統覚判断が、
       狭義の統覚である。
 
 発展的弁証法は、概念の順次の所有の積み重ねに他ならない。概念の所有は記憶に
残すことである。人の場合は、残された記憶が認識我観に概念質量となり、認識主観
に言語記号の体系機能となる。この左脳の言語記号質量も我観の産出する概念質量で
ある。認識主観の言語記号体系は大脳左半球の新皮質の各連合野に置かれる。認識我
観の記憶体系も右半球の各連合野にある。連合野は判断を行ない、概念を認識する。
獲得された概念は蓄積され記憶される。連合野を除く領野は対象の認知を行なう。認
知されたものは左右の各連合野で図式化され、判断され、概念となり、認識される。
身体の体性運動や、書字と発語の体性運動も連合野で概念化される。その概念は、左
右のそれぞれで言語記号概念と図式概念となる。
 五感で認知したものを左脳は言語記号、及び前言語記号によって図式化する。音声
図式や文字図式の他に、匂いや色や触れた感じなどの五感で認知したものを図式化す
るとともに、思考や体性運動の図式も言語記号、及び前言語記号によって図式化する。
前言語記号図式は、♂♀符号、また表意文字である漢字の造作を簡略化したものに類
似している。ひとつの事象は単図式であるとは限らない。色彩のピンクは明度、彩度
色相の他に、温感や触感、更には思想的な図式などで複数構成されることができる。
この図式が概念となる為には、ピンクは例えばブラックと比較され、更に色立体上で
の配置照合が為されるかも知れない。これらはすべて簡略記号で概念化することがで
きる。接続詞「そして」は、[→〇→]のように、また「しかし」は、[→×→]の
ように前言語記号図式化され、ひとつの接続詞の概念は、複数の接続詞の図式の照合
によって判断される。このようにして、左脳の主観認識では簡略な記号的図式によっ
て対象を仮象的に想念することができ、効率的な抽象思考の作業が可能となる。それ
故、言語記号の理解に於いて、右脳を使用しないで行なうことが可能である。
 この抽象的認識の作業に於いては性差があることが判明している。男性はほとんど
左脳のみで抽象思考を行なうことができるが、女性は左右脳を同時に使って思考する。
女性に於けるこの現象は、本能生命の主観に対する防御力の発動による。その胎内に
子供を育てる能力を維持する本能個体の生命力は、女性の左脳と右脳を繋ぐ脳梁を太
く丈夫なものとして、左脳の現実から遊離した仮象の思考を排斥する。右脳の我観に
於ける図式概念は常に身体図式とともにある。身体図式は対象に感情と官能、知覚と
感覚を投入して対象をその内側から了解する。これを対象解釈と言い、解釈された対
象は単に概念に留まることはなく、感情と官能、知覚と感覚を備えた生きた身体の厚
みを持つ。本能に生きる個体存在は、その認識力を常に統覚に従わせる。我観は図式
概念を脳に蓄えるが、決してそれを所有することがないのは、図式に伴って常に知感
覚と情官を持つ自己身体を投入して、図式の解釈を行なうからである。男性に対して
女性は、より多く個体存在性であるということができる。但し、この個体存在性のア
イデンティティを持つ我観を、左脳の主体性がその所有理念によって所有すれば、本
能価値を所有する事態となり、愛を所有支配するという愛の不条理、二律背反する価
値の結合が現出する。
  視床下部が保持する価値は調和価値である。主体は、一方で辺縁系の誘導図式(誘
導理念)に所有理念を乗せ、他方で所有理念に対応して知感覚に良、快刺激を与える
ことによって統覚図式そのものを所有、支配、権力、翻弄の反調和価値で統率するも
のに変容することができる。こゝにはもはや反調和価値と二律背反する感謝、愛、善、
美の調和価値は存在しない。人間は主体性であるとともに本能存在である。第一反抗
期に於いて、主体は本能身体を所有、支配しなければならない。こゝには身体に行使さ
れる所有理念がある。第二反抗期に於いて、所有した身体に社会理念を与えねばならな
い。このとき本能を内観して得られた愛の理念を与えることができる。本能身体を以
って主体性となるには、必ず身体は主体の所有理念によって統率されねばならない。
社会的愛の理念は、従って、既に身体に植え込まれている所有理念の元に組み込まれ
る。人間存在に於ける愛の行為は、所有理念によって所有される愛の理念によって為
されることになる。愛の理念を所有するという形態を以って、人間はその心の隅々ま
で愛の心を漲らせることができる。この価値状態は、先の二律背反に拮抗する状態と
は異なっている。人間存在の価値二義性は、全き愛の意志から全き支配の意志の間の
階梯を昇り降りすることができるのである。
  行動するのは身体である。愛の理念を所有理念によって所有するのは身体である。
この弁証法で質量であるのは、所有理念を付与された身体であり、機能となるのは愛
の理念である。従って、この弁証法は非対称性調和の弁証法である。
 
 「対象が私の方に何か目的を持って向かって来る」という対象情報は、対象の存在
運動の印象を知感覚判断する視床を経由して大脳皮質各領野に送られ、対象が解釈さ
れる。解釈に於いては、対象が何であるかという概念の他に、対象の存在運動状態が
理解されなければならない。悟性によって存在の体性運動様態=「私の方に全力で向か
って来る」が判断されるとともに、理性によって存在の意志目的=「対象は私と親し
くなりたがっている」が判断される。悟性判断には体性運動図式と観念図式が、理性
判断には身体図式が参加することによって対象の存在が現実的に迫身して捉えられる。
大脳がこうして対象と自己の関係の状況判断を為すと、次にこの対象に対する自己の
対処行動が判断される。「私は対象と親密さを分かち合ってもよい」という観念が成
立する前に、対象の好印象が観念レベルで生成し、意志統覚の調和判断が発動されて
いる。この判断が理性概念野に投射され、対処行動が思考される。扁桃体の誘導が為
され、視床下部は「私は彼と親密になる」運動統覚を発動して、基底核から発する統
覚図式に体性運動図式を合流させる。
 
  前頭左右の腹側部に位置する前頭連合野が悟性の領域である。前頭前連合野で理性
概念が判断される。おそらく本能及び主体の理性判断の領野が、左右それぞれにある
と考えられる。こゝでは、視床下部の存在了解、即ち価値発動を受けて理念を判定し、
意志決定を行なう。理念を概念の三能力だけで産出することはできない。本能理性は
もちろん、主体理性にあっても、まず本能意志の定位(感情)判断の投射を受け入れ
なければならない。自己主体性がその所有力を発動できるのは、四つの知感覚への良、
快刺激と、本能意志を質量とする、所有理念を機能とする誘導力に拠る。
対処行動に於いて、我観の座にある本能の理性判断は、視床下部から受け取った統覚
判断の情報を踏まえ、その判断は主観の理性判断に影響されることはない。主観はこの
本能統覚の判断を変更することはできない。主観はこの本能理性の判断を、主観側に
ある言語記号によって行なわれる本能理性判断の座で、無意識の本能意志を意識化す
る。こうして主観は本能に介入することができる。その介入は直接的には、本能理性
判断の領野に並んで接している主体理性判断の座で為され、間接的には扁桃体が基底
核に対して誘導することによって行なわれる。
  精神主体性では、この意識化された本能理念を主体理性の座で言語化する。しかし、
自己主体性では反本能理念を主体理性に生成する。
 
 図式概念は大脳右半球と、おそらく小脳でも何らかの形で扱われる。図式概念は対
象に具体的な時空を与える。通常それは、直感像、あるいは直感音ではないが、見え
ない直感像、聴こえない直感音と言える。図式概念の形成には身体図式と体性運動図
式が参加する。これに対して主観側概念にも、やはり言語記号+前言語記号による体
性運動図式の参加がある。しかし、主観概念では身体図式の参加なしで認識を遂行す
ることが可能である。しかし、広さではなく深い認識には、右脳との協働が必要であ
る。右脳の認識は身体と結合しているので、認識を自然必然性に導く。それは認識さ
れたものを、存在の真理の下に照らし出すのである。これは、すべての認識の作業は
本能内観の照明の下に行なわれるべきであることを言っている。
 個体存在も左脳に前言語記号を持ち、チンパンジーなど類人猿ではかなりの程度の
発達があり、準主体性と言えるものを持っていると考えられる。鳥類では鳴き声によ
るコミュニケーションは、左脳よりも右脳により多く依存しており、前言語記号の発
達は右脳の図的概念の補助を為す程度であると考えられる。
 

   先頭に戻る                                     It returns to the head.

                      
        Reference data 1        Psychopathology       The top page  
           参考資料1           精神病理学         トップ・ページ