autism自閉症 (小児精神病)

《治療・養護・介護のための新療法による=在宅心理カウンセリング

 

1)定義

 
「病因」

   心身症、及び過食症などの行動精神病とともに、価値不全症候群と呼ばれる。価値不全とは持って生まれた本能の価値“感謝・愛・善・美“が不全になるということである。

下の座標の「精神病=根本情態性捕縛」域に示したものが、精神病の定義である。

    
 
                      〈価値不全症候群の各存在度〉
 
                              (本能的価値の自由)
              ┌──────┐
            │心身症=怒り│           ┌─────────┐  
         └──────┘     │    │本能価値による理想│  
                              │    └─────────┘  
      少なくとも現時点までは、 │                               
     本能的価値を押し潰されるこ      価値不全症候群では、自然 
     ともなく、生育的にはまず順     生物としての真の意味での理 
     調であったが、現在に於て家     想状態を描くことができる。 
     庭的に、あるいは社会的に本     但し、それは情態的にであり 
     能的諸価値の不遇、不満、不     言語的に表現できない。無意 
      良がある。“愛せない”とい  │  識的主体性であるからである。
      う怒りを本能自身が受けて身 │                              
      体に様々な病変を起こす。  │                              
                    │                              
         ─────────────┼─────────────
     (本能的不良)        │0       (本能的現実の良) 
                        │                
       “愛されない”という本能 │   “愛がない”という積年の 
      的情態が過去から現在に亙っ │  思いがある。その無意識的な 
      て積重しており、その無意識 │  価値尺度は鬱屈しているが、 
     的価値が不安、絶望、混沌、 │  本能的な刹那的良、あるいは 
     恐怖の中で瓦解していく。こ │  刹那的快を求めて行動するこ 
     の無意識的な主体理念が喪わ │  とで、愛がない代償とする。 
     れゆくとともに、主体性が崩 │   集団│放浪│徘徊      
     壊する。             家族│情愛│性愛      
                   │   食 │浪費│過食      
     ┌───────────┐ │   休息│嗜癖│指しゃぶり、煙草
     │精神病=根本情態性捕縛│ │     ┌────────┐  
     └───────────┘        │行動精神病=呪い│  
                                  └────────┘ 
                          (本能的価値の不自由)
                      

 

 自閉症は小児の精神病である。成人精神病と同じく主体性が崩壊する。

  小児精神病は、生育史的に主観体を除く第一反抗期までの小児、即ち主体的意志の実行可能な先主体性と原主体性が罹患する。原主体性の場合は第一反抗期過程に入り、前意識的主体性への過渡段階にあっても罹患する。

  つまり、「自立自由(第一反抗期の完成)」が成立していなければ小児精神病となり、成立していれば成人精神病となる。このように自閉症は器質的な疾患ではなく、生育史的心理的な精神疾患である。

 
 
 
                      〈自由の行動から見た生育史〉
 
┌─────┬─────────────────────────────┐      
│主観体    │主観は生成しているが、身体は未だ所有できない。                 
│     │自由は概念に留まり、自由意志による行為はなせない。              
├─────┼─────────────────────────────┤      
│先主体    │身体を半分だけ所有している。自由意志による行動を行なえる。│      
├─────┼─────────────────────────────┤      
│原主体    │身体を全量所有しているが、その身体的自由は社会的規則に         
│     │従わせることなく自己一極性の自由を謳歌する。                   
│     │これに対応して扶養者の躾(しつけ)が行なわれる。《原自由》│      
├─────┼─────────────────────────────┤      
│前意識的  │第一反抗期を経過して、躾が内面化される。立ち居振る舞いを │      
│主体   │他の存在に対して配慮する身体的自由となる。                      
│     │その存在観は身体的社会の自由の多極性(多くの他者存在)          
│     │の中に自己存在の身体的自由を確保することである。                
│     │前意識は即物性、唯物性の世界である。          《自立自由》│      
├─────┼─────────────────────────────┤      
│意識的主体│第二反抗期の自律は観念的、形而上的理念を獲得する。              
│     │身辺の外に想像しうる人類社会が射程に捉えられる。                
│     │その存在観は人格的社会となり、例えば故郷に錦を飾る              
│     │というような”成功”が価値観となる。          《自律自由》│      
└─────┴─────────────────────────────┘      
 
      ∴躾:”身が美しい”という原主体性の生育史的立場にぴったりの、
       よく考えられた文字である。
    ∴先主体期は生後3ヶ月から8ヶ月で、最近の研究*では生後7ヶ月までに
    昼間の睡眠が激減することが分かっている。
    また原主体期は生後4年までであるが、生後3年で睡眠覚醒のリズムが
    出来上がる。
      *「生後7年間の睡眠覚醒リズムの変動経過」 黒田 稔
 
 
 

                    〈自己主体性の理想生育史〉

                                                                            
  主体名│          発達段階    │  主体と本能の関係          │存在の様態
────┤0才  ────────┼───────────────┼─────
                我観発達期    │[言語記号+主観=自由の概念]│概念性    
  主観体│      (主観搖籃期)  │が産出され、我観は主観に所有、│          
                              │支配される。                  │存在性    
────┤三ヶ月  主観定立期  ─┼───────────────┼─────
                              │「自由」に基づく主体意志が、誘│半身体性  
  先主体│        分立二義期    │導図式と知感覚刺激によって本能│          
            (身体所有習練期)│統覚に侵入して、本能の存在性を│          
                              │奪い始める。主体は身体の完有 │     
                       │(母子分離期〜2才)を目指す。│半存在性  
────┤八ヶ月  母子分離期  ─┼───────────────┼─────
                              │本能は自己の統覚主導力を奪われ│身体性    
  原主体│    身体所有期   │、潜在化する。主体は身体を完全│          
              (自立葛藤期) │に掌握し、主体意志で自由に本能│          
                              │を翻弄できるようになる。身辺社│  
                              │会での自立(四才)を目指す。 │潜存在性
────┤四才    第一反抗期  ─┼───────────────┼─────
    │               │扶養者の前意識的理念の下で、自│自立存在性 
前意識的│     自立期     │前の存在観を確立し、成人に伍し│          
主体  │       (自律葛藤期) │て社会に自律することを目指す。│          
                              │本能はほぼその存在性を喪い、質│
                              │量的客体化を示す。            │反抗質量性 
────┤十二才  第二反抗期  ─┼───────────────┼─────
                              │認識力が発達し、自由主観は自己│          
                              │内省が可能となる。主体は価値観│自律存在性
 意識的│                  │(アイデンティティ)を定立し、│          
  主体          自律期        │自律する。この強力な主体体制の│          
                              │下にあって、本能はモノ化され、│          
                              │調和の弁証法に生きる個体存在性│破壊質量性
                              │が抹殺される。                          
────┘死  ─────────┴───────────────┴─────
                                                                            
    
・「自己主体性」は精神疾患の一つである自由拡張症候群の主体の存在性である。
・しかし、主観を立てる人間の主体性は本能存在である身体を所有、支配し、
主体性であることそれ自体がすでにして自己主体性を理念に持つ存在である。
   ・人間の全ての精神疾患は、自由拡張症候群(自己主体性)に起因する。
      ・「存在の様態」は、各生育期の上が主体、下が本能の様態であり、共に主体の観点か  
        ら見られた様態を表わす。「破壊質量性」は本能が主体に完全に所有、支配されて、  
        認知症へと崩壊の過程にある様態である。認知症は自由拡張症候群の極限の発露である。         
        

 

 

「症状」

 主体性が崩壊した結果、主体性は主観だけを保有する。これは生後3ヶ月の主観体にまで撤退した主体性である。その崩壊像(症状)は自己身体を自由に操れないことを特徴とする。また成人精神病のような妄想幻覚による自生世界の構築は見ることはなく、病児の妄想や幻覚は、子供らしい無制限性の自由によって内容を彩られている。その世界は現実の物との力学的接触はあっても、社会とは接触しない世界である。

 社会的接触が少なければ、第二反抗期年齢以後には、病児の最後の砦である主観が放散して、その主体性のすべての痕跡が消滅し、コントロール機能を失った身体は現実の活動をすべて停止せざるを得ない状況にまで立ち至る。

 

                   小児精神病の病型と病態〉

 

病型

病態

本能統覚型

主体性が弱い。活動が少ない。

主体統覚型

活発な活動。

主観型=アスペルガー症候群

(高機能自閉症)

社会性は豊かに発揮できないが、自己の纏まりがあるので、規範に添った社会行動ができる。

理性型=サバン症候群

(高機能自閉症)

絵画や音楽や数学に得意な才能を示す。

 

 

 

 

 

 

2) 発病機序

発病機序は成人精神病と同じである。しかし、発病時の主体性崩壊は成人のように主体性のすべての機能の残遺を見ることができずに、主観しか残すことができない。

原主体性である小児の場合は、自立を目前にしながらも、未だ社会性を持った身体的自由を果たしていない生育史的段階なので、そのアイデンティティは「原自由」、即ち主観にのみ存し、摂理(本能)価値を見失った後はこの「原自由」に撤退する形になる。

  原自由の世界は、他者との葛藤のない自由一極性の世界である。

 

 

 

《早い発症例では生後六ヶ月から一歳で発症する》

 

  先主体性から原主体性への生育史上のステップアップでは、本能存在である身体を

完全に我がものとするために主体は本能との葛藤に入る。

「仮設自由損傷症候群(てんかん等)」の成人患者が、

その疾患に罹患しているかぎりは本能に半分量遺した先主体性(仮設主体性)で

あり続けるように、小児精神病の先主体性の患児にとっても、本能身体を全量、

自由力でねじ伏せねばならない原主体性への跳躍は、

自らの摂理(本能)を擁護する宿命に照らして不可能性として迫ってくる。

 

 自立に至るまでの、母子分離期を前後するこの生育段階(先主体期=先自由期)では、

主観が身体を自由に所有して支配する主体体制を習熟することを、もっぱらの目的としている。

 

 最初は、この主体体制は身体に仮設的に構築され、本能存在であると同時に、

主体存在であるという二極構造をつくる。これを「分立二義性」というが、

この「分立二義存在」は主体意識であるときにも常に、本能が別個の存在として機能している。

つまり、この存在は二つの存在性を生きる両義性を持つ。

 

  病児では片方に本能存在、もう片方に仮想主体性(摂理主体性=生育段階の精神主体性)

という本能(“感謝・愛・善・美“の価値)を内観している主体存在が位置する。

この主体存在に対して、「内的必然性を持たない扶養者付与の原意識的理念(“所有・支配・権力・翻弄“の自己主体性価値)」を持つべき扶養者環境の押し付けがあると、病児は価値的両義性に混乱し、最終的に本能の摂理価値(”感謝・愛・善・美“)を捨て去る。

 

 

  精神病一般は本能価値を捨て去ることで発病する。

自閉症児の分立二義性にある先主体性でも、分立している本能存在の(“感謝・愛・善・美“の価値)と、

未だ生育史的に成熟していない仮想的な主体性が内観している本能価値(“感謝・愛・善・美“の価値)が

諸共(二つとも)に捨て去られることになる。身体(本能存在)が捨て去られることで主体性は崩壊する。

 

病児は身体(意志)を放棄した生後3ヶ月の主観体にまで撤退するのである。

主観体は身体を所有しない、ただ自由の概念だけを持つ存在である。

 

 

 

《遅い発症では4歳の第一反抗期渦中で発症する》

 

 早い発症例では先主体性期から原主体期にかけて、「扶養者付与の自己主体性(“所有・支配・権力・翻弄“の意志を持つ主体性)価値」が、本能価値(”感謝・愛・善・美“)を駆逐することが発病因であった。

 

遅い発症例は4歳という身辺的な自立期に差し掛かって、その自立理念(価値)として既に受け入れている扶養者付与の自己主体性(“所有・支配・権力・翻弄“の意志を持つ主体性)価値からシフトして、仮想主体性(病児では”感謝・愛・善・美“の意志を持つ精神主体性)を自立させようとすることを契機として発病する。病児は、「内的必然性を持たない扶養者付与の原意識的理念(価値)の影響を拭い去る」為に『自立』しようとするが、扶養者の力に抗しきれずに失敗する。自前で立てた本能由来の”感謝・愛・善・美“の価値が崩落して、その主体性が崩壊する。

 

 

小児神経症では夜間の主体性崩壊があるだけで、意識がある昼間は扶養者付与の原意識的理念に無条件に従っているので、自立葛藤は抑制されて主体性崩壊にまで至ることはない。しかし、小児精神病では自立は価値(理念)の問題なので、葛藤は主体性成立の究極条件を問うことになり、そこで理念が成立しなければ意志を立てることができずに主体性が崩壊する。

 

 

主体性が崩壊すれば後には一切の主体的意志は成立できないので、扶養者付与の“所有・支配・権力・翻弄”の価値をも、もはや意志に立てることはできない。

その主体性が崩壊した場所は自立期であり、その主体性は原主体性を一段階アップした前意識的主体性である。

                                 

主体性が崩壊した病児は、原主体期の”無制限性の原自由に撤退する”。無制限性の原自由は、“所有・支配・権力・翻弄“の資本主義的現実価値を剥ぎ取った真の無制限な自由の意志である。

資本主義社会ではモノ(情報や商品や経歴など)の利害得失に関して自己の自由を目論むが、無制限性の自由意志と言えば、無方向性の制約無き“所有・支配・権力・翻弄“の意志である。

 

 

〈自由の行動から見た生育史〉の表で原主体の項の《原自由》は、先主体、更には自由概念のみの存在である主観体にまで通低している自由意志である。

《原自由》は“自己一極性”であり、原主体期はその自由意志を現実(物対象世界)的価値に従わせた無制限性の“所有・支配・権力・翻弄“の意志として発動している。そこに扶養者が資本主義社会に通用する社会的自由としての”所有・支配・権力・翻弄“の躾(制約=方向性)を行う。

 

 

しかし、主体性が崩壊した病児に於いては、この原自由期にも、またその背後の先自由期にも留まることができない。人間主体にとっての主体性の崩壊は、自己身体を“所有・支配・権力・翻弄“できないことを意味し、彼女は環境世界の現実の一員であることを止めることを意味する。彼女には、もはや主体性は無く、生後3ヶ月の主観体にまで撤退し、そこで自由の概念のみを所有する“主観一極性”となって生きることが許されているだけである。

 

 

  こうして病児は、発病直後の主体性崩壊から覚めると、原自由(主観一極)の世界に没入していくことになる。

 

 

 


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