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                          成人神経症 第一回入門講座

                               病理編  2

       週2〜3回配信   1998.10.05.    通しNo.6       読者数 229 人

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             目次           1  自己主体性としての自由損傷症候群
                             2  自由損傷症候群の家族因

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                                 本号の参照URL

     
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/planetx/tenp-5.htm
             <主体性の様態と疾患>

     
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/planetx/tenp-4.htm
             <精神疾患の発症力学>

     {精神病理学}〈自由拡張症候群に、行動精神病と神経症の〉
               〔道徳倒錯(意志了解型)〕
                          〈神経症性虚偽症候群〉
     
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/planetx/psycho.htm


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                          自己主体性としての自由損傷症候群


 自由損傷症候群主体は自己主体性です。彼の扶養者もまた自己主体性です。
その主体意志が自己主体性価値であることは、根本情態性の”おそれとおのの
き”から退避していることを示します。
 根本情態性が肯定的アイデンティティであるのは摂理主体性だけです。摂理
主体性であっても価値不全症候群や精神神経症では、肯定と否定の両義的アイ
デンティティとなっています。

⇒{
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/planetx/tenp-5.htm
            <主体性の様態と疾患>


 自己主体性の「根源病因」は根本情態性を否定的アイデンティティとして自
己意識から排除することにあるのです。自己主体性である扶養者は根本情態性
から逃れる為に、その自己主体性理念(価値)を常に使用状態にして置く必要
から、所有支配の標的(対象)に向かって、自己主体理念の矢を射掛け続けな
ければなりません。

        ∴根源病因:下の参照図の「本態因」のこと。
⇒{
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/planetx/tenp-4.htm
            <精神疾患の発症力学>
                   注:説明文も。


 これはまた、自己の存在観を常に補強していなければならないということで
あり、この補強は、自己の存在観のモデルを自己の外に打ち立てることによっ
て為されるのです。
  自己の存在観を自己の外に敷衍していくと、自己自身が存在観を見失ったと
き、自己内省の作業を簡略にして、モデルを見ることによって恢復できます。


 扶養者は乳幼児に対しては、その身辺社会的存在観に自己を敷衍していき、
青少年を所有、支配することに於てはその社会的存在観を標的にします。これ
らの標的はその存在が直接、的(まと)にされるのではなく、アイデンティテ
ィを形成する一般理念と、パーソナリティに於て価値(目的)判断の任に当た
っている個別理念を射抜くことによって、間接的に自発的自立(自律)性を不
能にされるのです。 


  自己主体性である扶養者は、こうして自己内省の手抜き作業で存在観を得ら
れ、内省の度に根本情態性と対峙して”おそれとおののき”に襲われることを
極力避けることができます。もっと言えば、存在観の内省なき補強を可能にす
るために、自己の存在観の信者を自己の周りに侍らせるのです。


 こうして自己主体性の存在観に取り込まれた青少年は、この存在観を行使し
ていくに当たって、二つの道を選ばねばならないことを知ります。ひとつは、
与えられた存在観を一度自分自身で咀嚼(そしゃく)し直して、扶養者に付与
されたものとしてではなく、自前のものに消化する道、もうひとつは、咀嚼が
不充分のまゝ呑み込んで、消化するに負担となる道です。


  後者の場合が、自由損傷症候群のアイデンティティを持つことになり、前者
の場合は自由拡張症候群のアイデンティティを得ることになります。
 生育的には、自由損傷症候群の扶養者からは自由損傷症候群が生じ、自由拡
張症候群の扶養者からは自由拡張症候群が生み出されます。また自由損傷症候
群の扶養者が自由拡張症候群主体の社会で敗者の立場を痛感していると、子供
を社会的強者に育てることがあり、その場合は当然、自由拡張主体の世界観を
子供は身に付けることになります。あるいは、自由拡張と自由損傷の割合を様
々な程度に、混淆することもあり得ます。


  第8講で扱う性倒錯、拒食、不登校、出社拒否、家庭内暴力、いま世間を騒
がせている毒物混入、それに加える保険金詐欺と自殺狂言、また現在、裁判が
進行中のオウム真理教の宗教詐欺・隷属・無一物・苦行・殉ずる・リンチ・殺
人・サリン撒布などは、自由損傷症候群と自由拡張症候群、行動精神病などの
複合によって生じます。

⇒{精神病理学}〈自由拡張症候群に、行動精神病と神経症の〉
            〔道徳倒錯(意志了解型)〕
                       〈神経症性虚偽症候群〉
  
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/planetx/psycho.htm


 自由損傷症候群の罹患は、一個の人間に複合、重合している疾患の中で、突
出した疾患となった場合に、症状が顕となるのです。







                               自由損傷症候群の家族因


  自由損傷症候群は「自律しなければならない」という命題を抱いています。
第二反抗期で価値自律が達せられると、扶養者付与の他発性前意識的理念の束
縛から脱して、自発性前意識的理念は晴れて自律する「意識的理念」となりま
す。



 社会の既成人に伍する、独立した人格を得る為に、自前の理念を求めて奮闘
する、この成長段階を扶養者が抑圧すると、彼は自前の理念、即ち意識的理念
を立てることに失敗します。“お前の遣り方を認める訳にはいかない”という
わけです。
 こうして少年、あるいは青年は扶養者の押し付けてくる理念に従い、従うこ
とによって成人神経症に罹患します。



 前項で、自由損傷症候群は自己主体性の存在観を、「咀嚼が不充分のまゝ呑
み込んで、消化できない」ことを述べました。
 扶養者が上のようである場合、その被扶養者、つまり、養われている子供も
この親の態度を学びます。これが先のtenp-4 の<精神疾患の発症力学>の図
では、【扶養者圧】と示されている疾患の「現象因(家族因)」です。


 前項で述べたように、疾患の「本態因」は各自の本能と主体の確執にありま
す。つまり、精神の疾病の大本の決定者、責任者は本人にあるのです。但し、
第一反抗期までの生育期にある子供に対しては、このように言うことは酷であ
り、第一反抗期を終えた前意識的主体に対してのみ、扶養者に対決し得る互角
の力ありと見做して、そう言うことが許されます。


  自己主体性となる家族因は、前項で、扶養者が自己主体性となる「本態因」
を抱かえて、その本態因からの逃走として、子供にその存在観を押しつけるこ
とにある、と言いました。しかし、「子供は親の背中を見て育つ」と言われる
ように、『自己主体性となれ』と言葉で強制されなくとも、親の立ち居振る舞
いを見ていれば、それを学んでしまうのです。「三つ子の魂百まで」と言われ
ように、四六時中見ている大人は親だけであるなら、子供は親に成人の範を求
めざるを得ません。


 同じように、自由損傷症候群の罹患は「本態因」と「家族因」にあります。
自己主体性の「自由」が「本能の根本情態性」を”おそれおののく”には、二
通りあります。ひとつは根本情態性に対峙して、それを突破するにせよ、また
踵(きびす)を翻すにせよ、その場からの「逃走」を図る場合と、盾を持ちな
がら、あるいは遮蔽物から遮蔽物へと逃げまどいながら「遁走」する場合とが
あります。この遁走が自由損傷主体の主体性です。


  遁走という本態因を抱かえている扶養者は、既に子供に「親の情けない背中」
を見せてしまっています。加えて、「癇癪・不機嫌・わがまま・甘え」で子供
を躾ようとするとき、「家族因」を積極的に与えてしまうことになるのです。
 「癇癪」持ちの父親は、食卓をひっくり返したり、高価な電化製品を投げつ
けて毀したりして、自由拡張主体の妻をさへ震え上がらせる程なので、前意識
的主体である自律前の子供にとってはなおさらでしょう。


 「甘え」の偽自律主体である母親は、子供を「甘やかす」ことによって、子
供に甘えるのですが、子供は扶養されている引け目から、母親の甘えを甘受し
て、「甘え」でこれに応えるのです。
 「わがまま」な親は、子供にあれこれと「世話を焼き」、自分の思い通りに
子供を扱おうとします。
  「不機嫌」な親は、子供のやることが「気に入らなければ」、子供をこき下
ろしてその成長の芽を摘み取ってしまいます。


  こうして自由損傷症候群はあたかも遺伝するかのように、親から子へと伝播
されていくのです。




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