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       てんかん、脱力睡眠発作、幼児共生精神病 第一回入門講座 

                             病理編  6
             
       週刊   1998.07.24.   通しNo.10          読者数 61 人

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          目次         1  深崩壊と通常崩壊
                            A 通常崩壊
                            B 深崩壊
             
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           テキストは付加、及び削除の変更があり、また部分です。
      他の参照テキストもこれに準じます。    

 

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                       │    症状症型        │     
                       ├────────────┤     
                       │ 主体統覚型    主観型  │     
                       │                        │     
                     │ 本能統覚型  理性型 │     
                     └────────────┘     

 



                             (B) 深崩壊



  深崩壊では崩壊主体が喪われます。症状症型によって程度の差はあるが、ほ
ぼ完全に砕け散り、主体意志が跡形もなくなります。主体意志は自由の概念が
本能意志に植え込まれている状態です。
  主体意志が消滅すると、自由の概念が組み込まれて主体に所有されている本
能もまた、途方に暮れるという意味で機能不能に陥ります。本能統覚は、知感
覚と認識の二つの経路で主体に誘導されなければ、もはや自ら立つことを得な
くなっているからです。人間に於ては主体性の機構と本能存在は、一体化して
はじめて存在の意識となるのです。


  深崩壊を理解するためには、人間が所有している本能存在を主体性から析出
する必要があります。


⇒{参考資料1}〈本能存在の上下位統覚の構造〉

⇒{参考資料1}〈一次と二次の統覚機能の協働〉

⇒{参考資料2}〈判断の脳生理図〉



  本能存在(動物)に於て、認識と意志の二つの判断の能力は、一次と二次の
二つの機構を持っています。これを「一次脳」と「二次脳」と呼びます。脳幹
と小脳が一次(下位)機構で、脳幹の上部の間脳にある視床、及び視床下部と、
大脳は二次(上位)機構です。一次脳の中の小脳は二次脳の中の大脳と同じく、
認識と体性運動に関する判断の能力を持ちます。



  一次脳の小脳もまた、その認識判断にあたっては図式を使用しますが、この
図式は「反射図式」と呼ぶべきもので、大脳で使用する図式とはかなり様相の
異なったものと思われます。
 それは簡単な信号のようなものかも知れません。私達は手慣れた日常の動作
をたくさん持っていますが、そのとき何か図式概念が思い浮かぶでしょうか?
歩行するとき、いちいち”次、右足、次、左足”などと図式で考えているでし
ょうか? 足は頭があらぬことを考えていても勝手に動いていきます。だから
二宮尊徳の銅像は間違ってはいないのです。
  一次脳は自動運動動作を可能とします。それは0・1式の信号のような「反
射概念」であるからできることです。



 私達の日常の活動は、まず一次脳が機動し、脳幹から間脳への情官発動を介
して二次脳の機動を促し、この機動が一次脳にフィードバック(もらったもの
をお返しすること)されて行なわれます。はじめに一次脳の反射運動があり、
これが二次脳で補正され、更に二次脳の情報は一次脳で補正されるのです。
 情官発動は知感覚発動と併せて統覚発動ですが、その発動に至る判断の過程
は、[←行動←情官発動←知感覚発動←]の双方向のフィードバック経路です。



 一次脳と二次脳の両者は互いの情報を自体とする弁証法機能となるが、各々
は自己身体、また対象界を独自に了解する弁証法機構でもあります。視覚情報
は二次脳から、その他の知感覚、及び識覚情報は一次脳から入っていきます。
互いの補正の作業は両者が各々独自機構であるから可能となることです。
 フィードバック機構で判断されている間、情官発動は継続されつゝ、一次あ
るいは二次の判断結果によって、その意志様態は変動していきます。


 発生的には二次脳の能力は、一次脳の能力を「自体」(質量=最初にあるも
の=本質)とする「対自体」(自体に対するもの)の、弁証法の「機能」です。
二次脳は反射の能力である一次脳の機能となって、反射の存在運動を正確さと
効率の二面で補強します。効率的構成は我観によって、正確な発動は統覚によ
って練成されます。

   ∴発生的:クラゲや磯巾着(いそぎんちゃく)などの腔腸動物は、一部の
    ものは神経中枢(神経節)を持つが、中枢のない神経細胞、神経環、
    神経網によって、反射のもっとも原始的な存在運動を行なっている。

    ∴弁証法の「機能」:対自体のこと。自体が質量を持つのに対して質量が
    ない”働き”です。ここでは一次脳が本質であり、二次脳はこれを扶
    助する働きであること。


http://www.dokidoki.ne.jp/home2/planetx/tenp-2.htm
                   〈一次統覚の判断=反射運動〉

 

  上の座標は脳幹の一次統覚の判断です。判断は情官であり、身体の定位と運
動です。これに加えて、小脳が外界の認識と体性運動(歩いたり、体を動かし
たりする手順。大脳では頭頂野にその図式がある)で誘導します。
誘導は、認識力が反射概念を選択する形で思考し、体性運動に幾つかの反射の
パターンを指示する、というような反射の連続でなされます。二次脳機構を持
たない生物は、この一次脳機構だけで充分に生活しています。



  一次統覚は反射判断なので、下の二次統覚の座標にみるように、その身体表
出(定位と運動)は単運動となります。二次統覚もこうして見るかぎりでは、
それに劣らず単調な運動ですが、これに大脳の認識が付加されると、私達が見
慣れている動物の巧みな身体の運動となります。この一次、二次の両統覚とも
本能の統覚です。


http://www.dokidoki.ne.jp/home2/planetx/tenp-2.htm
                  〈二次統覚の判断=定位と運動〉

 

 上位統覚が完全に崩れ去り、通常崩壊にみた崩壊主体は、上位(二次)統覚
と運命を伴にします。これは”意識を喪う”ことです。しかし、脳器質がこわ
れるわけではないので、崩壊主体構造は固化した状態で上位統覚の中に刻まれ
ています。



 遺された下位(一次)統覚は言語、及び図式概念による思考能力ではないの
で、下位統覚に依っては崩壊主体を形成することはできません。下位統覚は個
体存在の意識としては弁証法的「質量」であり、上位統覚の「機能」なしで組
織立った意識足り得ません。既に述べたように、上位統覚の本能の機能が主観
から解放されたにしても、受動的には可能であっても能動的にはもはや生きる
ことができない状態にあります。
 一次と二次の両脳機構が弁証法機構を形成していることは、大脳を喪えばい
わゆる”脳死状態”となり、直ちに植物状態となることで示されています。


 深崩壊に至ると、主体機能が喪失された大脳の機能は崩壊的な沈黙状態には
いりながら、小脳に“崩壊”の伝令を送ります。
  常主体性では本能の諸機能の全量を主体の配下にしています。但し、主観が
直接所有支配しているのは二次脳の我観だけで、二次統覚は間接的に所有支配
しているだけです。一次の各能力となると主観はまったく影響力を及ぼすこと
はできません。


 一次脳は二次脳との弁証法関係によってやむなく主観に従っているのです。


 主観を喪った状態の本能の諸機能は、個体存在の下にはもはや結束すること
はできません。本能の意識はあっても一人立ちはできず、主観を喪った後の本
能機能は主体性崩壊の「エコー」を受けながら生きていくことになります。言
い換えるなら、主観が発した”崩壊の指令”に従うということになるのです。
 “崩壊”の指令はしかし、上位統覚が完全に沈黙している状態にあっては、
「崩壊主体の構造情報」のない“崩壊”の情報と、「意志発動様式」に則った
主体機能のダメージの強度が送られてくるだけです。

      ∴意志発動様式:症状症型のこと。価値観で決定されるパーソナリティ
           の付加形成要素である。



 『主体統覚型』では“主体統覚”の”崩壊”情報が、反射(一次)統覚にフ
ィードバックされてきます。意志発動様式によって、伝達される”崩壊情報”
が異なってきます。
  
   ∴フィードバック:双方向の情報のやりとりの中では、情報の発信は受
      け取った情報を篩(ふる)い、それに付加情報を付けてなされる。



  大脳と小脳を結ぶ直結路はありません。認識は間接的に統覚を経由して行き
来します。
”崩壊情報”は上位脳から下位脳に送られ、下位脳は受入した情報を上位脳に
返します。上位脳は意識を喪失しているので、下位脳から返送された”崩壊に
関連する情報”は大脳の中で「エコー」します。


 エコーは最初の上位統覚から起こされた”崩壊情報”の巡りの全体を指しま
すが、意識喪失した大脳が自ら発した”崩壊情報”をフィードバックされて、
その脳球中に響きわたる”崩壊情報”こそはあらゆる意味に於て”エコー”で
あると言い得るでしょう。
  このエコーの中で本能の一次統覚と二次統覚がその姿を露にするのです。