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成人神経症 第一回入門講座
病理編 1
週2〜3回配信 1998.10.02. 通しNo.5 読者数 230 人
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目次 1 自由損傷症候群
2 偽自律と自律葛藤、及びその存在度
3 通常神経症と精神神経症
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〈自由損傷症候群(通常神経症)の偽自律(偽自立)の存在度〉
∴小児返り(乳児返り)
(自由力の自由)
┌─────────┐ ┌──────────┐
│自立できない―怒り│ │ │自立葛藤なし―幸福 │
│偽自立「不機嫌」 │ │ │偽自立「癇癪」 │
└─────────┘ │ └──────────┘
│
不機嫌 │ 癇癪
│
自律しようとしてできない │
その怒りを、不機嫌として噴 │
出させる。最も上位の自律葛 │ 癇癪という、爆発する自由
藤であり、自律への欲求が一 │ 意志を発動して、一挙に世
番強いが、それ故にまた自律 │ 界を手に入れる。
の失敗が根本情態性に捕縛さ │ 自律葛藤から超出し、偽自
せ、自由力の無によって主体 │ 律に慢心して、自律葛藤が
性が崩壊する。 │ ない。
│
(現実の力の不良) │ (現実の力の良)
───────────────┼────────────────
│0
│ 自由力の自己評価が低く、
扶養者の加護の下に、甘え、 │ “自律したくない”状況で、
依存する。この自律しなく │ あり、この鬱屈した呪いを
ともよいという居直りは最 │ 仮染の現実の自由力の良、
も下位の自律葛藤域にある。 │ つまり、わがままを出せる
│ 場で、刹那的良として解消
│ する。中位自律葛藤。
│
甘え │ わがまま
│
┌─────────────┐ │ ┌──────────┐
│自立しなくともよい ―惧れ │ │ │自立したくない―呪い│
│偽自立「甘え」 │ │ │偽自立「わがまま」 │
└─────────────┘ └──────────┘
(自由力の不自由)
∴四領域とも偽自律様態にある。「偽自律できない」は「偽自律度」
が(+・+)域には至っていないことを表わす。
※
自立(自律)に失敗して居直った様態が偽自立(偽自律)である。
※
偽自立の「癇癪」「不機嫌」「わがまま」「甘え」 の症状は、小児、成人に共通する。
小児は乳児(原主体)期に、成人は幼児(前意識的主体)期に、それぞれ退行して、
それぞれの自立と自律の成長課題を放棄する。自由拡張症候群と同等の自由力度を
示すが、彼らの自由力は成長課題にターゲットを置いたものであるので、
自由拡張症候群のような社会的悪の行使はない。但し、自由損傷症候群と自由拡張症候群は
並症することが可能であるので、例えば癇癪と悪意志が混在することはある。
〈自由拡張症候群の存在度〉
(自由力の自由)
│
│
│
┌──────┐ │ ┌──────┐
│ 虚偽症候群 │ │ │ 狂気症候群 │
└──────┘ │ └──────┘
│
│
│
(現実の力の不良) │ (現実の力の良)
───────────────┼───────────────
│0
│
│
┌────────┐ │ ┌───────────┐
│ 判断停止症候群 │ │ │ 根本情態性遮蔽症候群 │
└────────┘ │ └───────────┘
│
│
│
│
(自由力の不自由)
〈自由損傷症候群(通常神経症)の自律(自立)葛藤の主体度〉
∴対象の圧力に対して
(自由力の自由)
┌─────────┐ │ ┌──────────┐
│上位葛藤 ― 怒り│ │ │ 葛藤の超出―偽自立 │
└─────────┘ │ └──────────┘
”圧力に抵抗する”が、 │ 生育史を一段階落として、
「自律できない」 │ 「自立・自律」しているので、
│ 彼の前に圧力はない。
│
│ 自律に無関係であるという
自己視線恐怖 │ 意味で、「自律せずともよい」
自己臭恐怖 │ ので、葛藤がなく、従って、
異性恐怖 │ 葛藤症状はない。
│
【自立葛藤の様態にあるとき、偽自立の │ 【癇癪の情態はこの(+・+)域の主体度の偽自立の表現である】
不機嫌の表現(情態)は出現しない】 │
│ 自立・自律が成功した場合は、この領域では
│ 自由拡張症候群主体の最大の自由力度に成る。
──────────────────┼────────────────────
(現実の力の不良) │0 (現実の力の良)
│
│
服う │ 他者視線恐怖
従う │ 他者臭恐怖
│ 同性恐怖
│
【自立葛藤様態では甘えは出現しない】│
│ 【自立葛藤様態ではわがままは出現しない】
│
”圧力に抵抗しない”ので、 │ ”圧力に抵抗できない”ので、
「自律しなくてもよい」 │ 「自律したくない」
┌───────────┐ │ ┌─────────┐
│下位葛藤 − 根本情態性│ │ │中位葛藤 ― 呪い│
└───────────┘ │ └─────────┘
(自由力の不自由)
∴ (+・+)域の主体度の【癇癪】は、
自立、あるいは自律を放棄して、生育段階を一段階落とした主体性に
居直った「偽自立」あるいは「偽自律」の主体像である。
従って、この主体性では葛藤などの諸症状は超出している。
∴ 精神神経症の場合もこの座標が共有される。
但し、(+・+)域の主体度の価値度が、【無意識的摂理主体性(仮想主体性)】、
あるいは【無意識的摂理価値(仮想価値)】 となる。
通常神経症は偽(にせ)であるにせよ「主体的に自律している」。
通常神経症主体は“所有・支配・権力・翻弄“という目的価値が明確であるからである。
彼は只、自由量をその最大量に達しさえすればよいからである。
本能から無意識に突き上げてくる“感謝・愛・善・美“の仮想価値による精神神経症では、
あくまでも仮想的な主体性に留まる。仮想的であるかぎり、偽自立も自立もできない。
仮想価値を擁する主体性は、いつも自律(自立)の葛藤段階の仮想主体性に留まる。
従って、精神神経症では偽自律(偽自立)の【癇癪・不機嫌・わがまま・甘え】は、
成立しない。
通常神経症では主体は本能を振り切って自由を達成することで自律(自立)を可能とするが、
仮想主体性(精神神経症主体)では、主体性が本能を背負って立たねばならない。
すなわち精神神経症主体では本能を背負う力を養うという必要不可欠の自律試練を持っている。
それゆえ精神神経症主体が、この(+・+)域の主体度で真の自立、あるいは自律を
達成できるのは、“感謝・愛・善・美“が仮想価値から真の目的価値に昇華
できた場合となる。つまり、精神神経症では、価値不全症候群が併症している。